投稿日:2013年11月19日
新築一戸建て分譲の原価が上がってきています。円安による部資材費の上昇や職人不足と賃金改善による労務費の上昇などがあり、それに輪をかけて原価の大半を占める土地取得価格が上がってきているためです。アトラクターズラボ株式会社・戸建分譲研究所による試算では、今年度は昨年度より7.8%・+200万円も上がる見込みです。
アトラクターズラボ株式会社戸建分譲研究所では全国の新築一戸建ての販売広告データを収集していて、それをもとに新規販売価格と契約価格を解析しています。そこに土地取引の成約価格データや各種経費の実例を多変数解析した結果で全国平均の原価を計算しました。
新築一戸建て分譲の平成24年度の全国平均の原価は2555万円と算出されました。土地価格がやや下がり1200万円で原価全体の47%なので、標準的指標の50%より安くなっています。前年度の東日本大震災などにより土地取引が少なくなり価格が低下したためです。また、一部には高騰したところもありましたが、新築一戸建て分譲の事業用地としてはそういうところは避けて、割安なところを探しますので、この価格に落ち着いたということです。
それが平成25年度の見込みとしては土地代が+90万円・+7.5%上がってしまいます。アベノミクスによる金融緩和で不動産にお金が10兆円を超える額で入ってくるために、土地全般的に上がってしまったためです。一部では+30%以上上がっているところもありますが、新築一戸建て分譲の事業としては、そのような土地は買えないので、割安な物件を探すことになります。その結果としても+7.5%は上がってしまいます。
さらに建物原価が+9.1%・+100万円上がります。円安による部資材費の上昇が今年の4月よりキツクなりました。窓サッシなど2割以上の値上げされているものが多いです。そして職人不足による施工費の上昇です。一番足らないのは鉄筋工なのですが、新築一戸建て分譲においては鉄筋工は関係なくて、基礎工が不足しています。そのため東日本大震災前には「一人工一日1万2000円」くらいだったのが現在では一日2万円以上となっています。例えば基礎を一日4人がかりで3日間かかるとすると12人工になりますので、一棟当たり以前は14万円であっのが、現在は24万円と+10万円も上がりました。この他の職人も大小はあれ上がっています。そのために建物原価は上がりました。
そして来年度の見込みですが、現在の流れは変わらないため、原価合計で+3.5%・+100万円上がります。これは経費をおもいっきり削る前提ですので、経費が通常どおりとなると+6%・+170万円近く上がってしまいます。
そしてここに消費増税が加わりますのでさらに+3%上がるのですが、これは発注元が素直に受け入れるかどうか不明なために除外しています。もし加われば土地を除いたもので+43万円が加わることになります。となると普通に考えると+213万円で2900万円になってしまうということです。
ただデベロッパーとしてはそれらを販売価格に転嫁できればいいのですが、それは簡単ではないために、原価の圧縮を1円単位で行っています。その中で、土地・建物を少し小さくするということが行われると思います。また部材のグレードを少し下げるということもあるかもしれません。
いずれにせよ、来年度は原価は上がることが確実です。そのために販売価格も上がると思われます。マンシヨンのように「新々価格」で現在から+20%も上がることはないですが、「新価格」として+10%くらい上がるかもしれません。