投稿日:2013年7月7日
日本経済新聞社が、「国土交通省が戸建て中古住宅の新しい評価基準を作る」と7月7日の朝刊に掲載しました。現在は、建物評価は原価償却によるもので15年から20年でゼロ費用かとなります。それをリフォームや改修などしたものを価値として上乗せしようというものです。
この考え方自身は私が国土交通省に提案したものですが、大事な事がまだできていないのを日本経済新聞社は知らないようです。
それができないと、この考え方は、何の意味も成しません。それは国土交通省も知っています。
まず、リフォームの費用を上乗せした中古住宅の新しい価格に対して住宅ローンが満額出ることです。それには金融庁の査定マニュアルの変更が必要で、それは金融庁の理解は得られているのですが、問題はその査定マニュアルどおりに、現場での住宅ローン融資が実行されるかどうかです。
今の戸建て中古住宅の住宅ローンの融資基準は基本的に「土地の路線価+α」となります。それは「戸建て中古住宅の価値や価格の形成理論」がプアーなためです。
中古住宅というものの価格形成は、買う側にすると「使用価値」となりますが、売る側としては「住宅ローン残高+α」もしくは「購入価格からの経過年償却」という論理です。この2つの論理がズレているのが問題です。
価格決定理論においては、供給量と需要量に左右されるのが基本的な考え方です。ただこれは大量消費財をベースにした考え方です。
そこにおいて戸建て中古住宅は、土地が道路一本違うだけで、同じ番地でも接道方角が違うだけで、違う商品となってしまいます。さらに、マンションと違って、品質・機能・性能が1戸づつ違います。また、同じ建物㎡でもリビングの広い3LDKと古い間取りの4DKでは違います。
そのため、供給量と需要量の考え方でいくと、供給の価格決定要素が「住所番地」と「土地㎡」と「建物㎡」の3つでは価格決定できず、それに「接道条件」と「その土地の人気度」と「建物間取りの時代標準性」と「日当たり」と「デザイン」の最低5つが必要です。となると需要供給の価格決定表を作る際に供給商品を決めるのに8つの要素があり、それぞれが多数の変数をもつために、需要供給表は一つの市でも数百になるでしょう。 その数百の供給に対する需要は限りなく少なくなってしまいます。場合によりゼロということがあるでしょう。
例えば、郊外住宅地の典型として春日部市を考えると、春日部駅からバスもなく徒歩60分の1980年代に作られたキレイで閑静な住宅地の50坪の土地の築30年の中古戸建てを売るに出すときに考える売値が1480万円くらいです。土地30万円で土地50坪という計算です。ところが、それに買い手がつくかというと、まずありません。
買う側とすれば、1480万円の中古戸建てに望むのは、まず駅近です。現在の居住地の近くが良いとまず考えます。その購入者は賃貸が多いので、ほとんどが駅近に住んでます。ですので徒歩60分というだけでアウトです。
買うのは、駅徒歩15分くらいで土地25坪くらいで、新築住宅が安かった2004年頃のもので接道がやや悪いものです。土地評価が50万×25坪=1250万で、建物評価が新築時で1000万とすると経過減価で20年減価償却とすると10年経過で半分ですので500万円です。これで1750万円です。これが売り急ぐと1580万くらいまで下がります。
このような選択となり、価値価格がつかず買い手があらわれない戸建て中古住宅はたくさんあります。
この問題の根底にあるのが、マンションの中古住宅の価格形成において重要な賃貸収益法が適用できないことです。戸建て中古住宅において「賃貸収益法」を入れると軒並み路線価よりも下がってしまいます。それはマンションが土地活用率が高い「使用性優先住宅」だからです。
この「賃貸収益法」は私の会社の社長が発想し理論形成しました。そして最近はアメリカのケースシラー住宅価格指数に近いものをマンションで理論形成して「需要供給をベースとする再販価格法」を発想して理論形成しました。これにより都心タワーマンションの新築と中古の価格が安定したために取引が活発となりました。
つまり「戸建て中古住宅の新しい評価基準」を作るには、「新しい戸建て住宅の価値基準理論」をつくらなければだめです。それは、たぶん私の会社もしくは私しかできないでしょう。ただ、それに1年かけて取り組んでいますが、なかなかできません。
・需要供給表が無限にできしまうので、それをどう組み合わせていくか。
・建物評価基準において、使用性評価をどう数的にとりこんでいくか。
・戸建ての評価には「幸福感」とか「日本人の住文化・心」をとりこまなければいけない。
などあり、現在の戸建ての中古ストック4000万戸の全ての詳細な評価をしないといけないことに陥っています。
これができないと金融庁の際マニュアルが変わっても、戸建て中古市場は変わらないでしょう。この背景は国土交通省は知っていますが、日本経済新聞社は知らないことです。