投稿日:2012年5月28日
戸建分譲パワービルダーの上場6社の平成23年度決算がそろってきました。
各社の決算短信から、戸建分譲の契約戸数と全社売上と経常利益を抜き出しました。(飯田産業とタクトホームは第三四半期の数字から推計しました。)
■戸建分譲の契約戸数は2万4627戸で前年比108%と増えた。
戸建分譲の契約戸数は一建設すが前年比97%と前年割れとなった以外は、各社とも前年を110%以上も上回っています。(タクトホームは上場1年目なので前年比がありません)
戸数としては、一建設が7139戸でトップを堅持しましたが、アーネストワンが6952戸と急追しています。
東栄住宅とアイディホームが前年比120%超えで大きく伸ばしました。
全国の契約は11万2350戸なので、上場6社のシェアは22%となりました。首都圏のシェアは高いのですが、地方都市が低いために、全国としては22%にとどまりました。
■売上は7347億円で前年比+115%と伸びた。
売上は全社売上を使いましたので、戸建分譲以外も含まれています。
前年比較のある5社全てが110%以上伸ばしたために、全体としては115%と大きく増えました。
一建設が2000億円を超えました。ただ、これはマンションの売上が増えたことが大きいです。
全国では、推計で3兆5323億円になります。それで単純計算するとシェアは21%となります。
■経常利益は541億円で前年度94%と減益
経常利益はアーネストワン以外の全社が減益となりました。6社合計の売上経常利益率は7%と悪くはないので、前年が良すぎたということです。
アーネストワンは経常利益219億円でダントツのトップとなりました。あとは全社100億を切りました。
前年はリーマンショックから回復していたのですが、まだマンションは本格回復していなかったために、戸建分譲にとって競合が少ない、独断場の年で、売上・利益とも絶好調でした。
それが震災の影響で消費マインドが下がるのと、土地の上昇と、部材費の上昇、施工費の上昇などがあり粗利が下がりました。つまり、販売価格は下がるが、原価は上がるという悪い状況です。
ただ、前半は昨年の契約分の引き渡しがあり、粗利の良い売上があったので良かったのですが、後半は粗利の悪い物件が入りました。それでプラスマイナスで、前年割れですが、経常利益率はまずまずとなりました。
■企業としてはアーネストワンが好調
アーネストワンは契約戸数・売上・経常利益のすべてにおいて前年を上回りました。
特に経常利益は219億円で業界トップとなりました。売上経常利益率は11.7%と唯一10%を超えました。
売上総利益率18.4%と決して高くはありません。販管費と人件費が少ないのです。
広告宣伝費はわずか12億円で売上広告費はわずか0.6%です。通常が2%と言われていますので、1/4という少なさです。
販売は一般の不動産仲介業者が行うのですが、それがうまくいっているということです。
また人件費も20億円という少なさです。社員745名で売上1872億円ですから、社員一人当たり2.5億円の売上で、これも一人1億円という経営の基準からすると2.5倍です。
ここに利益の秘密があります。
ただ、販売価格がパワービルダーで一番安かったので、仲介でも売りやすかったのですが、それが施工費の上昇などで上がっています。場所によってはアイディホームの方が安くなっています。
ただし、販売を仲介に委託すると販管費は少なくてよくて、業界全体が好調期にあるときは良いのですが、供給過剰になり低迷期になると、マーケットニーズとのギャップが生まれて、販売回転率が落ちます。
その時に、どうするかです。
すでに足元では、完成在庫が増えつつあり、それにマンション販売が過剰になりすぎていて、マンションの完成在庫も過剰となっています。
ですので、この夏以降の販売回転率を維持できるかがポイントとなります。