マイスターインストラクション

2025年問題。団塊世代が後期高齢者になると住まいのニーズが変わる。

投稿日:2013年12月12日

「団塊世代」は1947年から1949年生まれで合計800万人という人口の塊です。この世代が就職・結婚して多摩ニュータウンが始まり、高度成長を作ってきました。その世代が今年(2013年)に64歳から66歳になっていて、来年には完全定年をして年金生活になります。そのため年金財政が苦しくなっていきます。
年金財政以上に問題なのは、この世代が75歳を超えて後期高齢者になり医療費を大きく増やす時がくる時です。
それは12年後にやってきます。そしてそれは医療費の問題だけにとどまらず、住宅にも大きな変化をもたらします。「2025年問題」といってもいいかもしれません。
後期高齢者の人数の推移をみると、後期高齢者の人数は2013年に1554万人であったのが団塊世代が後期高齢者になり始める2022年には2000万人を突破して、2025年には2307万人にもなり2013年比では+48%も増えます。

この時の日本全体の医療・介護・年金などの社会保障費は、平成25年度の社会保障関係費用・29兆円の48%増加としたら43兆円になります。となとると平成25年度の日本の一般税収43兆円と同じ額になり、社会保障費だけで日本の税金収入が使われてしまうことになります。
ところがもっと大きな問題は、後期高齢者になると介護が必要になるのが時間の問題になってきます。となると、バリアフリーで無くて、商業も医療も不便な郊外一戸建てやエレベーター無しの団地には住みずらくなってきます。その時に後期高齢者の人数の対応するように病院や公的老人ホームは増えるとは考えせれません。となると、現在の持家から緩和ケアのような設備となっている緊急医療・介護サービス付の共同住宅に住まなければならない人が増えてきます。
それらに加えて、未婚率の上昇や女性の社会進出増加によるDINKSの増加など世帯構成の変化などを勘案してあるべき住居形態別の世帯数構成を計算してみると、共同住宅が圧倒的に不足することがわかりました。
2025年住宅ストックと世帯構成は

住宅ストックと世帯構成を比較すると、2013年には住宅ストック総数は6722万戸である中で古家・空家は1050万戸と推計されて居住性・流通性のある住宅ストック数は5672万戸となり、世帯数5092万よりも多くなっています。そのため全体数としては住宅ストックが余剰しています。ただ業態別にみると賃貸住宅が大きく余っていて、その他は不足です。ただ不足と言っても居住性・流通性の無い住宅を足すと全業態で不足はなくなるので、賃貸以外は旧耐震であるなどの機能・性能の問題と言えます。
それが2025年には居住性のある住宅ストック戸数が6040万戸に増えて、世帯数は5230万なので、マクロ指標的には足りています。
ただ業態別にみると、共同住宅(マンション)のみが590万戸不足になります。これは主に医療・介護サービス機能のある居住設備へのニーズが増えることによるものです。
また賃貸住宅全体としては戸数は余るのですが、その内容でギャップがでてきます。現在の賃貸住宅はほとんどが若者シングル向けの住宅ですが、必要なのは高齢者シングル向けの賃貸住宅となります。ですので賃貸住宅内でも不足はおきます。
逆に、持家一戸建てが910万戸余ります。郊外一戸建てや病院へ通う交通手段の無い「へき地」住宅などから緩和ケア的要素を持つ共同住宅への大移動が必要とされてきます。
商業・医療が遠くてバリアフリーで無い一戸建てで自宅介護すると、寝たきりで点滴を打つしかなくなり、症状は急速に悪化します。それに加えて自宅介護は介護をする子供などにも大きな負担をかけることになり、「介護失業・倒れ」を引き起こします。それが「老々介護」となると介護する側が倒れて介護できなくなることが多いです。
緩和ケア設備のように、点滴打ちながら自由行動ができるとか、介護ベッドや介護用トイレなどにより、身の回りの用事をつたえ歩きでも自分でできることを促す設備が無いと急速に症状が悪化してしまいます。
それで公的な老人ホームに入居しようかと思えば、今でも入居希望者が多くて順番待ちで数年待つなんて状態で、それでは民間の老人ホームはというと入居一時金数百万円と毎月の入居費10~30万円がかかり、お金持ちでないと老人ホームには入れない状態です。そのため病院が老人ホーム代わりになっていしまっています。
これらの対応として自宅リフォームという手段もあるのですが、玄関の段差の解消とかトイレの開口部拡大や風呂の高さの変更などやると大きな金額になってしまうのと、耐震機能の強化も必要となり1000万円を超える金額になってしまい、とても払える金額でなくなる場合が多いです。
では自宅を売ってマンションを買おうと思っても、自宅の価値がほとんど無い場合が多いです。中古住宅の場合は価値のほとんどが土地の評価になりますが、都心により近い駅の周辺以外は路線価が㎡10万円以下が多いです。
となると自宅を売ると1000万円前後にしかならず、買いたいマンションは3000万円以上で、買うに買えないということになります。
このように自宅をリフォームもできなくて、売ることもできない人が590万世帯も出るのが2025年です。ある意味では「自宅難民」と言ってもいいかもしれません。
これが「2025年問題」です。
政府・行政のできることは限りがあります。であれば民間の住宅業界としてなすべきことがあると考えます。
UR団地の大幅なリノベーションにより高齢者向け団地を作るのもいいかもしれません。ただ、できうれば若年世代も入るサスティナビリティのある団地にして、高齢者に子育てをサポートしてもらい、若年夫婦は週末に車を出して高齢者の買い物を手伝うとか、荷物を運んであげるなど相互扶助にするのが、2025年の住まいのあるべき姿かもしれません。

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