マイスターインストラクション

2012年は「下山の思想」よりもドラエモンのポケットが幸せをもたらしてくれる。

投稿日:2012年1月3日

昨年「坂の上の雲」のドラマが話題となりました。
明治人の欧米列強に国力で大きく負ける中でも、その心意気だけで立ち向かっていく雄々しきリーダー達と、それに引っ張られて日本の文明・文化・経済・軍事力が発展していくことが描かれていて、近代日本の黎明期のまぶしさがあるからです。
 また、それがGD世界3位に転落した現在の日本の状況への応援歌であり、「温故知新」のメッセージでありました。
 そしてその「坂の上の雲」を現代版で考えたのが、最近の書籍である「坂の上の坂」であり「下山の思想」です。
ただ、いずれも私はちょっと違和感を覚えました。

 特に五木寛之先生の「下山の思想」は、先生独自の宗教観が展開されていて、それには学ぶべきことは多いのですが、現在の日本の「思想の灯」としては、少し違う感じがします。
 時代感というか、現在の若い日本人の持っている閉塞感の理解が浅い感じがします。

 明治時代から戦後日本にかけて共通なのが、希望というか目指すべきものが欧米にあり、それを追いつき追い越せの時代でした。
 そして「奇跡の高度成長」を果たして、GDP世界二位となり世界でも最も経済的に豊かな国になったのです。
そして現在では、GDPが世界第三位に転落したとはいえ、経済的な豊かさはいささかも劣るものではなく、失業率も低く、教育レベルも高く、平均寿命も世界最高で、一人当たりGDPは世界トップクラスという繁栄を謳歌していることにはかわりありません。
 問題なのは、自殺者は年間3万人以上が続くなど、心理的な飢餓感・孤立感・閉塞感が根源的に存在し、「無縁社会」というテーマでNHKでも取り上げているほど、社会的な問題と認識されているのです。

 ひたすら坂の上の雲を見て、希望を持って坂を上ることに社会全体の目が向いているときはいいのですが、いざ坂を上りきってしまうと、どうしたらいいかわからなくなっているのです。
 それで坂の上に登ったとしても、自分でさらに坂を作ってさらに登ればよいとする考え方や、いさぎよく堂々と坂を下ればよい。それは必然的なもので、次に上るためのものと考えればよいなどの考え方がでました。

 でも現在の日本人のおける現状は違うと思います。
「なんで世界一でなければいけないのですか、二番ではいけないんですか」という言葉は良し悪しは別として、現在の日本を言い当てている思います。
 今でも、日本は世界に君臨するものをたくさん持っています。発明・特許の数とか環境技術とかLEDとかアニメ・漫画などあります。それにより日本の繁栄がささえられているともいえます。
 すでに組み立て型輸出産業では外貨を稼げなくなっていて製造業ではコスト競争に勝てなくなっています。
その世界から見た日本の姿と日本が国内で意識する姿にギャップがあります。
今でも、日本を牛耳っているのは、重工長大型です。経済人も政治家もそうです。

 この辺に、現在の日本人の心理的・精神的な方向性が理解されず、リーダーが不在となる原因があります。
ソフトバンクの孫社長にしても、重工長大の精神の延長戦上にいます。
 今の社会は「自己存立」を「他者依存」せざるをえないという矛盾したものをかかえています。
 それにあたり、各人で各人の置かれた複雑な状況を正確に把握して、正解を導き出して、タイムリーに経済的に行動しなければならないのです。それにしては、それに備える勉強・知識・見識を備えていません。

 受験戦争を勝ち抜き、就職戦争も勝ち抜き、次に結婚戦争を勝ち抜き、そのあとに「良き家族人」戦争に勝ち抜くという具合です。それで、それぞれの戦争に負けたり、逃げた場合のポジションがありません。「負け犬」「負け組」とかしかないのです。ですのでかなりの数の国民が「負け組」となっています。
 「家政婦のミタ」はそんな「負け組」家族の立ち直りというか、どう生きていけるのかのストーリーが、「隠れ負け組」の人達に受けました。
 宗教というものが、そのような精神的に未熟で弱い各個人を救うということもありますが、そんな安易な答えに飛びつくべきではないと思います。

 IT革命が進行し、web3.0になろうとしています。
それはあふれる情報をどう判断し、どう基準を作り、有益なものとしていくかです。
 今の日本人の行く末と似ている感じがします。

 物理的な物欲や、部品の組み立て製造業というものから、既存の部品・技術を組み合わせて新次元のものを作る。i-phoneやi-padのようにです。

 「下山」ではなく、「坂の上の坂」でもなく、「ドラエモンのぽけっと」かもしれません。
困ったら、それを解決するものが出てくる。
その成立技術や理論はわからないけど、スマホで探して、それを使いこなすことによって「幸せな時間」ができる。

のび太はいい人で草食系男子でダメな負け組だけど、ドラエモンのポケットで幸せに暮らしましたとさ・・・・・。

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